Cristallina Architecte | クリスタリーナアーキテクツ

Architecture with European inspiration & Japanese sensibility

- Design Journal

アーチ、曲線、曲面

13/02/2015

“Sur le pont d’Avignon l’on y danse, l’on y danse
Sur le pont d’Avignon l’on y danse tout en rond.”
アヴィニョンの橋の上で輪になって踊ろう・・・
世界の子供たちに親しまれている童謡に登場するのは、南フランスの町アヴィニョンにあるサンベネゼ橋です。

南フランスには、インパクトのあるアーチや円形の史跡がたくさんあります。
オランジュのローマ劇場、アルルの円形闘技場、ポン・デュ・ガールの水道橋、等々。
ヨーロッパ、地中海周辺の建築はアーチで始まった、と言っても過言ではないかと思います。
日本からフランスに行った当初は、石造りの建物のいたるところにアーチや曲線、曲面が存在することをつくづく感じたものです。
日本の木造建築においてあまり出現してこなかったこの曲線、曲面使いに何故か不思議にずっと引寄せ続けられてきたように思います。
最近、ひょんなことから、だいぶ昔のことになりますが、祖父が現地でおそらく墨で描いたアヴィニョン橋のスケッチがのった印刷物の1ページが親のスクラップファイルからぱらっと出てきました。
(上写真右横)祖父の成瀬勝武は若いころ政府の復興局から派遣されて何年かかけてヨーロッパ各地を視察したそうです。 帰国後、橋梁設計者として、日本全国の橋の設計を手掛けていて、お茶ノ水にある聖橋もそのひとつです。(残念ながら有名な建築家、山田守の影に隠れてしまったようですが)
遠い昔のことなので、親が沢山あった祖父の文献や橋梁関係の書物をほとんどうっちゃってしまいましたし、中学生の頃なくなったので詳しいことはあまり知りません。 祖父の書斎に行くと、理工系の書物や橋梁製図用具に囲まれた中で、庭の四季折々の植物の水彩画など描いていた姿を思い出します。 山々の風景や植物の大好きな人で庭づくりに凝っていました。 小さい頃からそんな祖父の影響を何となく知らず知らず受けていたのかもしれない、と今思います。
祖父も魅了されていたアーチ。
アーチはとてもシンプルな造形であり構造体です。
そこから形成される曲線、曲面が柔らかな空間、光の広がりをつくりだします。
日本の伝統家屋もまた、和らぎ、木の優しさ、温もりのある空間です。
しかし、現代の日本の建築物を見ていると、すぱっとナイフでカットしたような直線、ハードでエッジのきいた材料に囲まれた建物がとても多いです。 人それぞれ好みがあるので、それはそれでよいです。 でも、角にぶつかったら痛そうな感じ、等と無意識に思ってしまうのは、女性の母性本能からくるところなのかも知れません。
有機的で、でこぼこした自然な風合い、丸みの多い空間にいると、直角に削ぎ落とされ、エクセルの表でも見ているような直線に支配された硬直感から解放されるようで、ほっとします。
タイムワープして、曲線の大家 A・ガウディ先生を日本にお連れしてレクチャーしてもらおう、なんて想像してみると楽しいですね。

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