Cristallina Architecte | クリスタリーナアーキテクツ

Architecture with European inspiration & Japanese sensibility

- Design Journal

物語の主人公になる階段

04/10/2013

あんなに暑かった今年の夏がうそのように、すっかり涼しくなってきました。
前回の曲線についてのインテリアトークに続いて、今回は階段についてお話します。
パリにはマレ地区という、中世の面影濃い貴族の館が散在する界隈があります。まるで秘密の園に迷い込んでかのようで、古い建築を見るのが好きな人にとってそれは散策のしがいがあります。
パリで私の大好きな地区の一つです。
高いゲートを抜けると、古色蒼然とした建物に緑が眩しい中庭が広がり、美しいアーチの回廊に囲まれた空間が現れます。
そして、建物に入って行くと、大きなエントランスホールには廻り階段がお目見えします。
guenegau
こちらは渋いセピアカラーですが、フランソワ・マンサールという建築家が設計したゲネゴーの館です。
ちなみに、マンサード屋根(二段勾配屋根)とか、マンサード窓はこの建築家から由来しています。
ぼーっと写真をながめていると、上から美しい女性がロングドレスの裾の衣ずれをさせながら降りてくる姿が思い浮かんできませんか? このアーチで支えている堂々とした石造り、美しい曲線・・・。
(そう言えば、石造だらけのフランスに長くいた間、ただの一度も地震がありませんでしたよ。)
フランスには、このように多くの歴史を経た建物に、エントランスホールの見せ場とも言うべく、素晴らしい廻り階段が空間一杯に拡がります。これは、やはり垂直方向に発展していった西洋建築の伝統と言えるでしょう。 そして曲線のロートアイアンの手摺りのデザインは無数にバリエーションがあります。
降りてくる人は俳優となり物語の中のワンシーンになりそうです。
一方、日本の水平方向に展開して行き、自然と一体となった建築の伝統には、階段が主人公となることはなかったのでしょう。 雁行する薄暗い廊下の奥へ奥へと誘われて行きます・・・。
それは、西洋とはまた別の魅力的な空間ですね。
Chambord
こちらはところ変わって、ロワール地方のシャンボール城のレオナルド・ダビンチが考案した二重らせん階段。
フランスで建築学生の時、構造の授業でいろいろな建築パーツをテーマにして各々調査発表をすることがありました。 私は階段をテーマにして、実際あちこちの城館の階段を見に行ったり、資料を集めたりしたのでした。 とっても懐かしい~!
このらせん階段の中を時が止まってしまったかのように、ぐるぐる、ぐるぐる、さまよっている人生・・・?

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