Cristallina Architecte | クリスタリーナアーキテクツ

Architecture with European inspiration & Japanese sensibility

- Design Journal

アールデコを思い出す

07/10/2016

9月はとても雨降りの日が多く、10月になったらまた夏のような暑さに戻ったり、一体いつ秋らしい秋の日がくるんだろう?と思っていましたが、ようやく今度こそ秋らしくなってきました。
先月のことになりますが、夜何気なくテレビをつけたら、映画「華麗なるギャツビー」をやっていたのでそのまま見ました。 普段、巷で話題の映画をタイムリーにフォローしていないので、レオ様(短く略称とさせていただきます)出演の映画というと、タイタニック以降見ていませんでした。 考えてみればあれからもしかして15年以上?の歳月が経ってることに気が付きました。 童顔で細身、若さで眩しいイメージが焼き付いていたので、恰幅の良くなっている姿に、時が止まった永遠の青少年みたいな方でも、やっぱり年を重ねるんだなぁ、なんて思いました。
レオ様の迫真の演技もさることながら、20年代のアメリカンアールデコのインテリアや建築、ファッションや髪型など、素晴らしく再現されていたので最後まで見いってしまいました。
ロバート様(!?)の華麗なるギャツビーも素晴らしいですが、個人的にはレオ様の方が印象に残りました。
さて、アメリカンアールデコの映画を見ていたら、一緒にヨーロッパのアールデコも思い出しました。
自分の頭の中に記憶の小さな引き出しが沢山あって、中には埃を被って開かずの引き出しもあるのですが、その1つの「アールデコ」とラベルのついた引き出しが突然パカッと開いたような気がしました。
art deco
フランスで建築修行をしておりました時、20世紀初頭から30年代位迄の建築に興味を持ち、あちこち見て回った時期がありました。
写真左上はポルトガルのポルトにあるセラルヴェスハウス。
ポルトガルの建築家と言うと、真っ先に思い浮かぶのがアルヴァロ・シザですね。
その代表作品の1つの現代美術館があるセラルヴェス財団の広大な敷地の一角に佇んでいます。
アールデコ建築特有の不思議な小宇宙を幾何学的な庭と一緒に形成しています。
だいたいからしてフラミンゴ色の建物なんて、アールデコ的発想ですよね。
アールデコの建築は当時、富裕層や特権階級の人々のために建てられたものが多いです。
写真右隣の白金台の旧朝香邸などもそうですね。
この美術館で素晴らしいアールデコのデザインに触れた後、その柄のティーカップでお茶を飲み、その後庭園を散策すると、とても優雅な気分になります。
左下の絵はフランスの建築家ロベール・マレ=ステヴァンスの une cité modern と言うデッサン集から。 音楽的な幾何学的リズムの建築と庭のデッサンに魅せられて何度もページを引っくり返して見たものでした。 どこかヨーゼフ・ホフマンのストックレ邸の続きを見ているような感じを覚えました。
アールデコはシネマトグラフィーとかセノグラフィーと言った言葉が似合う、映画や劇の舞台のような不思議な独自の空間を構成しています。
右下の絵はフランスの代表的なアールデコのインテリアデザイナー、J-E・リュールマンによるもの。
こうして、再びアールデコの家具を見直してみると、old is new again で、改めて魅力的に思います。
壁の菱形模様は素敵な生地のふかふかした緞子貼りにしたいな、などといろいろ想像が膨らみます。
アールヌヴォーの有機的で奔放な曲線とはまた違いますが、アールデコは正円や楕円を含む幾何学な形が同じようにリピートしたり、シンメトリーであったりしつつ流れがあります。
同じアールがついても、アールヌヴォーは、バロック、ロココ、マニエリズム、東洋趣味などの系譜の延長上にあって、それらが19世紀末に行きついた先のように思えます。
一方アールデコは世紀が変わって、クラシシズムから脱却しつつ、ル・コルビュジェやミース、ニーマイヤーらが凌駕する頃のモダニズムの手前の、モダンだけど、美的な装飾的要素が幾何学的な形で伴っている初期近代的デザインと言えるでしょうか。
有機的な形や曲線形に魅かれるのでアールヌヴォーも好きですが、アールデコもやっぱり好きです。
華麗なるギャツビーの映画によって、久しぶりアールデコの世界に引き戻されたのでした。

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