Cristallina Architecte | クリスタリーナアーキテクツ

Architecture with European inspiration & Japanese sensibility

- Design Journal

オーガニック建築

01/06/2015

ここ数年を振り返って、思いがけず出会い、とても感動した建築があります。
それは、軽井沢にある「石の教会」です。(建築家:ケンドリック・ケロッグ)軽井沢を散策していた時、偶然通りかかり、訪れました。
stone church
決して大きな建物ではありませんが、そこには素晴らしい小宇宙が広がっています。
自然界の素材と柔らかで自由な曲線が互いに溶け合っています。
ランダムで角がとれた形の石積み、職人芸の有機的なデザインの木製家具・ドア。
壁を覆う緑、小さな水の流れ、天井のスリットや正面のアーチから射し込む自然光・・・
素晴らしくバランスのとれたアシンメトリックな空間です。
とても幻想的で、ドラマティックな空間でもあり、久しぶりにとても感動したのでした。
何でも人を感動させるものは芸術の域に属する、と思うのですが、この建築にもそれを感じました。
建物と自然が共生し、内と外の境界が曖昧で、建物の中に自然が入り込み、自然の中に建物が入りこむ・・・これは日本の古来からのもともとの建築の形でもあります。
ケロッグの建築にどこか共通するものを感じました。
建築も含め、オーガニックとうたうものの多くは、人の目や心、体に優しく健やかです。
ところで、最近、新聞を読んでいたら、新国立競技場の建設にあたり、古木を200本伐採したとのことでした。「老木を切る」と聞く時、何年も生きてきた木には精霊が宿っているような気がして、胸が少し痛い気持ちになります。 おそらく50年、60年かけて大きくなった木を200本も商業施設建設のために切るなんて野蛮なことです。 都区内に生まれて暮らし、その間、ヨーロッパにも長くおりましたが、ヨーロッパの都市に比べて、街の中に緑の広がりがとても少ないことを感じてきました。 小さい頃あった近所でのどかに凧上げをするような広い「原っぱ」はどこかに消えてしまいました。 都心に行けば、ビルとアスファルトと車のジャングル。 ただでさえも緑が少なく息苦しく感じるのに、不動産開発地に生えている希少で立派な木々を切り倒してしまう、住んでいる人々の自然環境より経済的利益が優先になっています。 ゲリラ豪雨、ビル風、気温・湿度の上昇、地球温暖化促進につながることをして、本末転倒の悪循環をつくり出しています。 歳月を重ねた老木や上質な建築は財産であり、世代を超えて共有してほしいです。
これからは、戦前までの、本来の日本の自然と共生する建築の姿に少しづつ回帰して行く時代だと思います。 それは単に昔の伝統建築の形を再現するとは限りません。 外界と対立するビルではなく、自然を採り込み、その快適さを楽しむ建築を摸索して行きたいものです。

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